イタリアの温泉リゾート滞在レポート
11月も半ばに入り、シャワーだけでは寒い季節となりました。今回は、10月中旬にプライベートで行ってきた北イタリアの温泉リゾート滞在についてレポートさせて頂きます。
イタリアの温泉とは
日本と同じ火山国のイタリアでは、北から南まで数多くの温泉が湧いています。イタリア語で<温泉>のことは<テルメ>といい、その歴史は古代ローマ時代に遡ります。当時から、主に治癒を目的とした保養施設や浴場があったほど、ローマ人の生活に馴染んでいたのです。日本では、映画『テルマエ・ロマエ』(古典ラテン語で❝ローマの温泉❞の意)がヒットしたことから、「イタリアに古代ローマ時代から温泉があった...」ということを知った方も多いのではないでしょうか。
日本でも<湯治>という言葉があり、リウマチや怪我の治癒、冷え性改善や美肌効果などの効能を掲げる温泉が数々ありますが、イタリアでも温泉は、主に病気の治癒目的として、皮膚病や喘息、中には結石にまで効くという名湯がいくつもあり、その多くは数百年前に診療所として開業し、今もなお専属のドクターが常駐する<温泉療養施設>として存在しています。
その伝統は今に受け継がれていて、源泉を飲んで治療するタイプのものもあれば、日本の露天風呂のような屋外の自然の中にある温泉地もあります。そして現代よく見聞きするのは、温泉プール(屋内外)に加えて、マッサージやエステが受けられるスパ、ジャグジーや各種サウナを併設した施設で、心身共にリラックスし健康を保つスポットとして活用されています。また、長期滞在用のラグジュアリーなホテルもあるため、併設レストランで美味しい食事やワインも同時に楽しむことができるのです!
日本の温泉との違い
では、日本の温泉とはどういった点が異なるのでしょう。
- 水着を着用して利用します!
- 温度は36度から38度とぬるめ(設定は施設による)~温水プールに浸かるイメージです。
- 洗い場はありません(シャワーを浴びるブースはあります)。
- ビーチサンダルを持参しましょう。水泳帽やシャワーキャップの着用が必須のところもあります。
アーバノ・テルメについて
今回ご紹介するのは、北イタリアのヴェネト州パドヴァ県にある『アーバノ・テルメ』という温泉保養地です。ミラノからは約250km(車で3時間ほど)の道のりですが、ヴェネツィアからなら約50km弱の距離にあります。最寄りのメジャーな都市はパドヴァになりますが、同じヴェネト州には有名な観光地ヴェローナ(約100Km)もあります。
この人口約2万人の町には、約70軒の宿泊施設があり、中心部にいくつもの温泉ホテルが軒を連ねています。当然のことながら、滞在するホテルによって受けられるサービスは異なりますし、ホテルのカテゴリーによって料金体系も差があるので、何に重点を置くかで検索し、写真や利用者の口コミなどを参照して選択するのが良いでしょう。
ちなみに、あまり知られていなのですが、伊香保温泉で有名な群馬県渋川市とは1993年から姉妹都市関係にあるそうです。日本の温泉地と姉妹都市として提携したいと当時のアーバノ・テルメ市長から希望があり、友人を介して群馬県に交流先の打診を行い、伊香保町が紹介されたという経緯があるようです。
温泉ホテルでの過ごし方
私が最初にアーバノ・テルメを訪れたのは、今から10年前のこと。結婚記念日の週末をゆったりと過ごすために選んだのが、今回レポートする<Grand Hotel Trieste & Victoria>(グランドホテル・トリエステ&ヴィクトリア)でした。実は、その頃ミラノで住んでいた家にはバスタブがなかったため、温泉に行くことは日本人の欲求に近いものがあった。。。という理由もあります(笑)
そして、一度目の滞在ですっかりこのホテルを気に入ってしまい、以来、毎年のように定宿にして訪れていました。他にも周辺にホテルはたくさんあるので、試しに変えてみようかという話も何度となく出たのですが、他のホテルに泊まってガッカリしたくなかったのと、他へ変える理由がないくらい満足していたので、結局いつもここに落ち着くという感じです。ところが、コロナの流行などもあったため、今回の訪問は約5年ぶりとなりました。
イタリアのホテルでは、ほとんどが❝ベッド&ブレックファスト❞といって、1泊朝食付きのスタイルが多いのですが、こうした保養地にある滞在型のホテルでは、1泊2食(朝夕食)付きの❝ハーフペンション❞や1泊3食(朝昼夕食)付きの❝フルペンション❞を選択する人がほとんどです。つまり、滞在中はホテルの敷地内で過ごし、ホテル内のレストランで食事を済ませるのです。そのため、長期滞在者でも飽きがこないように、ランチもディナーも毎日のようにメニューが変わり、前菜もプリモ(パスタやリゾット類)もセコンド(メインのお肉やお魚)もデザートまで、それぞれ3-4品から選べるようになっています。もちろん、ベジタリアンやグルテンフリーの方にも対応してくれています。
コロナ前の時は、ランチもディナーも前菜とデザートがビュッフェ・スタイルになっていて、かなりの種類から好きなものを好きなだけ取り分けることができたのも魅力的だったのですが、残念ながらコロナで廃止されてしまったようです。それでも、コース料理で選択肢があるので、充分な満足感であることに変わりありません。百聞は一見に如かず...ということで、私が今回2泊3日の滞在中に夫と二人で注文したものを抜粋してフォトギャラリーにあげてみました。
もう見ただけでカロリーオーバーなのですが、たまの贅沢なので滞在中はカロリーのことは考えないことにしました(笑)
さて、こちらのホテルを気に入っているのは、お料理のクオリティだけでなく、レストラン・スタッフのサービスの質の良さもあります。若手スタッフもテキパキしていて気持ち良いのですが、老舗ホテルにふさわしい熟練の給仕スタッフには本当に関心させられることが多いです。特に最初の数年の滞在時にいた名物カメリエーレ(すでに定年退職)は、常連のお客様から人気と信頼があり、ウィットに富んだ会話で笑わせてくれたり、時にエンターテイナーのようなおもてなしもありました。またある年、ちょうど誕生日当日に滞在した時は、サプライズでバースデーケーキとピアノの生演奏を用意していてくれました♪
そして、今回は5年ぶりの訪問でしたが、レストランのメートル(支配人)が私たちのことを覚えていてくれたことも驚きでした。年に一度の短期滞在にもかかわらず、こうしてお客様一組一組を注意深く目配りしてくれていることが、ホテルへの信頼につながるのだと改めて感じた次第です。
こうしたソフト面だけでなく、ホテルの設備などのハード面もとても気に入っています。ここは1912年創業の歴史あるホテルで、第一次世界大戦中にイタリア陸軍の最高司令部が置かれ、1918年11月4日にアルマンド・ディアス将軍が第一次世界大戦を終結させる『戦勝速報』に署名した部屋があり、その106号室は現在もスイート客室として使用されています。
本館の正面玄関の回転扉から入ると、館内はベルエポック調の豪華な調度品、絵画、磁器、ムラーノ硝子のシャンデリアなど、すべてオリジナルのものが保管され、ヨーロッパの老舗ホテルの雰囲気を存分に味わえます。バーコーナーやボールルームもあり、夕食の後にはピアノ演奏や歌手が歌うのに合わせてダンスを楽しむカップルも見かけます。
室内外3つの温泉プールに、サウナ、ミストサウナ、アイスルーム、ミストシャワーがあり、これらの施設とフィットネスルームは宿泊者は自由に利用することができます。水着の上に各部屋に備え付けのバスローブを纏ってビーチサンダルを履き、プールサイドのベッドで寝転がったり、温泉プールに浸かったりして、思い思いに過ごすのです。
25,000平米ある庭園には、色々な植物が植えられよく手入れが行き届いています。プールサイドにも、バーコーナーがあり、ここで軽食を取ったり、飲み物を頼むこともできます。
また、スパ・コーナー(別料金)では、各種マッサージやエステなどのトリートメントが受けられ、湯治で訪れている長期滞在者用のプログラムもあります。近年の改装では、VIP用のプライベート・スペースも加わり、他の宿泊客と交わらずに温泉やスパを楽しむこともできるようです。
Grand Hotel Trieste & Victoria
詳細はこちら☞ ホテルの公式サイト
Via Pietro D'Abano, 1
35031 Abano Terme Padova - Italia
Tel. : +39-049-8665100
まとめ
最後までお読み頂きありがとうございます。体験レポートいかがでしたでしょうか?おそらく、日本から限られた日程でイタリアまでいらっしゃる皆さんには、滞在型で旅行をされる時間的な余裕があまりないかも知れません。できれば、2泊して頂くとゆったりと温泉に浸かったり、マッサージやエステを受けたりできるのでお勧めなのですが、もちろん1泊だけでも貴重なテルメ体験ができることと思います。
温泉地の滞在とあわせて周辺都市の観光も効率よく組込んだプランなど、ご希望に沿った理想的な日程をコーディネートさせて頂きますので、是非お気軽にルイジーロまでご相談ください!
次回は、最寄りの観光地『パドヴァ』についてご紹介したいと思います。
投稿者プロフィール
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2011年よりイタリア・ミラノ在住。
渡航前は旅行代理店に勤務し、ヨーロッパ専門のツアーコンダクター
として、ヨーロッパ各地を周った経験から、2016年にルイジーロを
立ち上げて現在に至る。
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